日本人は昔から「木」の文化を伝承し、木の家に暮らし生活を営んできました。現代においてもその多くが木造住宅で暮らしています。新設住宅着工戸数(※1)では、89万戸の新設住宅のうち、木造住宅は49万戸(26年実績)で、55%を占めています。
従来から木造住宅が多く建設される中、住宅の性能に対する法律(「品確法」:住宅の品質確保の促進等に関する法律、平成12年施行)が制定され、住宅性能の質の向上や住宅建設(設計・施工)などにも大きな影響を及ぼす指標が掲げられています。
将来的に住宅着工が減少すると言われている中でも、森林資源が充実してきている現在、住む人にやさしい、木の良さを活かした家づくりを積極的に考え、推進することはこれからの日本にとって大きなテーマです。
木の建物や家具は、製造、利用方法により二酸化炭素の排出量が少なく環境に優しい製品である事、木には断熱性能や調湿機能があって、室内の快適性を高めるなど「木づかい」による多様な効果が検証されています。
くらしの中に木を使うことで、環境、ひと、森の優しい効果がたくさんあることを積極的にPRし、木づかいの輪を広めていくことが大切です。

※1:国土交通省「平成27年新設住宅着工統計」より

木の良さを活かした「木の家」の10の性能

1.構造の安定:
木材は軽くて強い材料(比強度が最も高い建築材料)です。近年では実大振動実験などにより木造住宅の耐震性の高さが実証されてきています。

2.火災時の安全:
不燃材による外壁仕上げ材料や内装材との関係から火災時における外部からの延焼なども木の効用を活かした新たな規定が設けられています。

3.劣化の軽減:
ヒノキなど耐朽性の高い木材や必要部分への防腐処理材の使用により木造住宅の寿命を守ります。

4.維持管理への配慮:
木の家は他構造と異なり構造面においての増改築・リフォーム作業が容易なため設備変更や維持管理がしやすいことも特徴のひとつです。

5.温熱環境:
住宅も省エネルギーが必須条件。木の家ではまず構造材として木材自身が金属(鋼材)等と比較すると断熱性に富むことがあげられます。いわば、木という断熱材に囲まれて暮らしているといえます。そして他の断熱材を補いながら、冬暖かく、夏快適な室内環境をつくることができるのです。

6.空気環境:
木材には天然木の香の効用に加え、木材特有の調湿性があります。吸湿と放湿を適当に繰り返し、室内環境として室内の温湿度変化を自然に調節してくれるのです。

7.光・視環境:
紫外線は人に有害だといわれています。近年では化粧品や衣類などにも紫外線をカットする効果が備えられています。実は木材にも紫外線を吸収、反射防止などの効果があるのです。目にも木は優しい素材です。

8.音環境:
石やコンクリートなどの硬い材料では音をはね返しやすく反響します。一方、木材では適度に音を吸収し、音が美しく響くなどの効果があります。劇場やホールに木の内装材が用いられるのはこの性質と肌合いを活かすためです。

9.高齢者への配慮:
木材ではよく温もりを感じるといわれます。床材や手摺など木材は触ってもヒヤッとすることが少ない温かい材料だといえるのです。

10.防犯:
木材は外部の塀などの環境材料として、住宅などの外装材にも使用されます。計画により環境に調和した仕切材としてまた、防犯上のスクリーンとしての配慮なども可能です。